『どつどどどどう』5
二〇〇一年九月一一日、ニューヨークで起こった同時多発テロに、たまたま居合わせた。テロを詠んだ一連の句より。
湧きあがるテロの噴煙緋のカンナ
火を噴いてビルが崩るる日の盛り
行く夏をマンハッタンが燃えてゐる
テロのような時事を詠むことは、俳句ではかなり難しいこととされている。短い詩形なので、時事の説明や解説のようになって、無残にも失敗してしまう場合が多いからだ。
しかし、時事を詠むことは、俳句の言葉を時代と合わせるためにも、俳人にとって必要な感覚、姿勢だと思う。そこに一平さんは挑んだ。直面したものとして、詠まざるをえなくなったといってもよい。
大島を離れ、東京を飛び立ち、中国、韓国、ニューヨークへ。歩き回り、「どつどどどどう」と時代の風に絶えず触れ続けることで、一平さんは、俳句の言葉の根っこを鍛え続けているのだと思う。
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