« 緑陰やリラと呼ばれて行ける犬 | Main | 遠雷や信じきつたる犬の腹 »

2006.06.03

『どつどどどどう』4

句集には、「豆の木」で二〇句競作として発表された、忘れがたい佳句が随所に見られる。なかでも、「雛流る」の句は、説明的のようでいて、抜群に目が効いている。面白くなる一歩手前で踏みとどまっているところがいい感じ。

  頭を石にあてて向き替え雛流る

  

    川曲がるあたりもつとも囀れる

  

    お涅槃の皿に渦巻くマヨネーズ

  

    マネキンの髪の銀色夏兆す

  金魚売り影を揺らして起ちあがる

「物に即し客観写生を心がけようとしているつもりなのだろうが、実際は物を見る常識的な主観の域を出ていない」「全体的に漫然と描写していて、対象の本質に届いていない」という厳しい指摘がある一方、「いい感じの気持ちのゆれ」「古典的ユーモア」「滋味がある」「さりげない詩情」「読めば読むほど味わいが出てくる」「句の芯に体温を感じる」「具象の力」「あっさりした作風」「手練れ」と圧倒的な支持を受け、一九九八年二〇句競作豆の木賞に輝いた。

ここに挙げた選評の抜粋からでも、その俳句の魅力は十分語り尽くされている気がする。

しかし、一平さんは、このことに安住しなかった。東北人特有の粘り強さ、勤勉さであろうか、さらに高みを目指してチャレンジを惜しまなかった。

|

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/59971/10330514

Listed below are links to weblogs that reference 『どつどどどどう』4:

Comments

Post a comment




Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.