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かんだやぶそば

東京で蕎麦といえば、知らない人はいないと思われる老舗ですが、それだけに敷居が高いと思われているのか、または行かなくとも知った気になってしまっているのかわかりませんが、意外とその実態はそれほど知られていないような気もします。

神田の路地を入っていくと、「都心にこんな建物があったのか!」と驚くばかりの純日本風の平屋が現れます。風情ある佇まいは、平成一三年に東京都歴史的建造物に指定されています。

庭も店の一部ということで、前庭の竹などの植栽が美しい。日本庭園風のアプローチから店内まで、ゆったりと余裕のある店づくり。入口手前には、今どき珍しい待合室があります。そこには初代・堀田七兵衛氏の胸像が。

引き戸を開けると、磨き上げられた硝子窓に囲まれた明るい椅子席、障子に囲まれた座敷、調理場に面した開放的な椅子席の組み合わせが、古風な中にモダンな雰囲気を醸し出しています。隅々まで手入れの行き届いた店内。老舗の息遣いをそのまま閉じこめたようでいて、開放感があります。

「せいろうそば」は、もりそばやざるそばに相当するもの。淡い緑色がすがすがしい。蕎麦粉一〇、小麦粉一の外一(そといち)。厳選した国内産蕎麦粉は、蕎麦の実の上皮を剥き、薄青い甘皮を挽いているそうです。

蒸籠に盛られた極細の蕎麦を箸ですくうと、からむことなく、すうっと立ち上がります。口に入れると、ほのかな蕎麦の香りと強いコシを感じます。のど越しで味わうのが粋といわれる江戸蕎麦を堪能できます。かなり濃い目のつゆは、どっぷりとつけずに、蕎麦の先にちょっとつけて食べるのが江戸風だとか。最後に、急須で出される、薫り高い蕎麦湯で割っていただきます。

薬味は、葱とわさび。蒸籠は黒塗り、猪口・徳利・薬味皿・蕎麦湯の入った急須は、渋い茶系の陶器で統一され、様式美のようなものを感じます。

やぶそばの蕎麦は、「量が少なく高い」と、まことしやかにいわれていますが、立地条件を考えれば、安いくらいでは? 

午前11時の開店とともに、待ちかねたように背広姿のグループをはじめ、老若男女で埋まります。店内へ入ったときの「いらっしゃいませ」の挨拶や、帳場の女将さんが調理場に向かって、客の注文を百人一首でも読み上げるように、語尾を長くのばして歌い上げる独得の声は、情緒たっぷり。店内に朗々と響き渡る女将さんの声。初代よりの伝統だというが、風情ある声を聞くのが楽しみという客も少なくないとか。

趣味性の高い食べ物として厳選した食材を使い、店の雰囲気づくりにも力を入れている、やぶそばならではのもてなし。しばし都会の喧騒を忘れさせてくれます。

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Tracked on 10/11/2006 at 20:08

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