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2005.02.05

ぼるが①

新宿西口の裏道の十字路。手前に、「ぼるが」とひらがな書きされた看板。幻燈のように懐かしい光を放っている。

名物の「ばん焼き」に煙る木の扉を押して、船底のような店内へ。止まり木に男たちの背が並ぶ。

カウンターの正面に、酒場「ボルガ」の創業者で俳人、高島茂のモノクロの遺影が掲げられている。無造作に分けた銀髪。鼻梁の通った凛とした風貌。どこか少年ぽい。ロマンチストの匂いもする。

若い頃の茂は、一見、線の細い美青年だったが、タチの悪い客が来ると、カウンターの中から飛び出し、胸ぐらをつかんで店の外に追い出した。

江戸っ子で、曲ったことが大嫌い。体を張って客や店を守る勇気と気迫に鳥肌が立った、という証言も残っているほど。カウンターに戻ると、にこやかに石田波郷の相手をしていたという。

喧騒、猥雑、無秩序が渦巻く戦後の新宿にあって、酒場「ボルガ」には、独特の雰囲気が漂っていた。半世紀もの間、俳句、詩、小説、映画、写真、演劇、ジャーナリズムなど、さまざまなジャンルの表現と創作活動の拠点・交流の場となってきた。

これはもちろん、茂の人間性に負うところが大きい。一兵卒として中国大陸に渡った後、焼け跡に築いた「ボルガ」は、多くの人々の還るべき憩いの家だった。それを守り抜いた茂は、心やさしい兄であり、厳しい父であった。

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